生き物図鑑

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エチゼンクラゲ

傘は半球状で寒天質は非常に厚くてかたい。直径1mをこす。淡褐色。傘縁は8区
分され、縁弁は約 120。口腕は短く、各々は2翼にわかれる。口腕および肩板には多
くの小触手および糸状付属器がある。 《分布》 日本海に産する。

Webより
エチゼンクラゲの生態研究の立場から
豊川雅哉
独立行政法人 水産総合研究センター
西海区水産研究所 資源海洋部 海洋環境グループ
主任研究員 博士(農学生命科学)
エチゼンクラゲは日本海沿岸で大発生して、定置網に被害を与える巨大なクラゲ、ということで有名になりました。大発生は2002年に突然始まり、2003年以降、2005年、2006年中規模発生、2007年、2009年とほぼ隔年で続いています。このような大発生は、1958年に記録されているだけです。1995年にも発生がありましたが、2000年代の発生と比べると小規模なものでした。
皆さんも、このクラゲがどうして大発生するようになったのか?と疑問を感じられることでしょう。結論から申し上げると、どうして大発生するのかは良くわかっていません。しかし、どこで、いつ頃発生し、どのような経路でやって来るのか?については、かなり詳しくわかって来ました。
大型クラゲ関連情報 2005年(水産総合研究センター 日本海区水産研究所)にある、日本周辺でのエチゼンクラゲ目撃情報の推移のアニメーションをご覧ください。
エチゼンクラゲは7月か8月に対馬周辺にまず現れ、その後日本海を東に進んで、日本沿岸に広がって行く様子が見て取れます。もし、エチゼンクラゲが日本沿岸で生まれているのなら、このように西から東へと一定方向で出現が進むのではなく、季節の訪れとともに、一斉に出現するはずです。また、大きく成長する前の小さいクラゲが多数見つかり、その後だんだんに大きなクラゲが見られるようになって行くはずです。しかし、日本沿岸に出現するエチゼンクラゲは、最初から直径数十cmの大きさです。(上記大型クラゲ関連情報のページにリンクのある出現情報のページで、7月から8月の目撃の集計表を開いて見ていただければ確認できます。)2004年以来、エチゼンクラゲの出現を監視する調査がたくさん行われていますが、日本沿岸で直径5cm以下の小さなエチゼンクラゲが見つかったことは、一度もありません。少なくとも現在までのところ、日本沿岸ではエチゼンクラゲは発生しないと考えてよいようです。
それでは、どこで発生しているのでしょうか?
最初にエチゼンクラゲが出現する対馬近海には、南西から対馬海流が流れています。エチゼンクラゲは対馬よりも南西からやって来るようです。実は、日本がエチゼンクラゲの大量出現に悩まされている時、韓国沿岸でもエチゼンクラゲが大量出現して、漁網に被害を与えたり、海水浴客が刺されたりしていました。また、中国では渤海沿岸では昔からエチゼンクラゲが漁獲され、食べられていました。渤海の沿岸や韓国の沿岸では、直径1cmほどの小さなエチゼンクラゲも見つかりました。エチゼンクラゲの発生源は黄海から渤海にあったのです【図参照】。
2004年以来、日中韓の三か国で協力して調査を進めて来た結果、以下のようなところまで研究が進みました。
エチゼンクラゲは5月に黄海から渤海にかけて発生し、6月には目で見えるサイズになります。黄海や渤海での発生が多い年と少ない年があること、ある程度発生が多くても日本に大量に来ない年もあることがわかりました。例えば2004年は日本での出現は少なかったですが、黄海では普通に出現していました。2010年は黄海でも渤海でもエチゼンクラゲは大不漁で、日本にもほとんど出現がありませんでした。
そこで6月から日本と中国や韓国を往復するフェリーからの目視調査が行われ、調査船による採集調査とも合わせて、その年の発生が多いか少ないか、いつ頃日本にやって来そうかを、詳しく調べています。さらに、海の流れを詳しく計算することで、日本沿岸各地への到達時期を予測できるようになりました。
研究の最前線は、どうして黄海で大量発生年とそうでない年があるのか?黄海からクラゲが流れ出しやすい年とそうでない年があるのか?というところに移って来ています。しかし、黄海には北朝鮮も入れて3カ国もの日本から見て外国が接しており、科学的な情報を得るのは大変困難です。今後とも、日中韓の科学者間での交流を深めることで、研究を前進させていきたいと考えています。
学名
Stomolophus nomurai (KISHINOUYE) エチゼンクラゲ
生息域
エチゼンクラゲは5月に黄海から渤海にかけて発生し、6月には目で見えるサイズなる。
見られる時期
8月